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スマイル合唱団の10年を振り返る

2019年10月07日

 皆様こんにちは。台風の影響かまだまだ暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか? 日本に暮す私たちにとって、地震や台風、豪雨といった自然現象は避けられるものではありませんが、災害の報道を目や耳にするたびに心が痛みます。被害の大きかった地域にお住いの方々には、心よりお見舞い申し上げます。

 私たち「音楽で日本の笑顔を」の歩みの中にも、ここ何年かの間に起こった自然災害が色濃く影を落としています。今年は、私たちNPO法人が設立(2009年)してちょうど10年になります。NPO法人にさきがけてはじまったスマイル合唱団も10年になります。今回は私たちの原点ともいえるスマイル合唱団の10年を振り返ってみたいと思います。

■「中島啓江合唱団」から始まった

 当時、私(岡田)と故中島啓江(以下、啓江さんと呼びます)は多い時には1年に日本各地で100か所以上のコンサートや講演会に行っておりました。たくさんの街に行きましたが、過疎化が進む街、殺伐とした人間関係がうきぼりとなる街......なかには元気な街もありましたが、ほとんどの場所で心の余裕、豊かさに欠けていると感じました。

 戦後のどん底から世界の経済大国になるために物質的な豊かさを追い続けた故でしょうか、昔は長屋的に近所が助け合っていたものですが......。そんな話を飛行機や新幹線の移動中によくしていました。

 音楽の力で、少しでもこの状況を変えられないだろうか? 私と啓江さんは2004年より合唱を通じたコミュニティー作りの活動を「中島啓江合唱団」と名づけ、全国の会館に合唱サークルを作り始めました。福井県坂井市、群馬県佐波郡玉村町、福岡県筑後市など多い時は10か所ほどありました。坂井市では5年続きましたが、市町村の合併や会館の担当者の交代など様々な理由でほとんどが2~3年で止めざるを得ませんでした。

■震災と寄り添い実を結んできたスマイル合唱団

 このまま終わらせてはいけない。意を決して、私達は「みんなで笑顔で歌って元気になろう」のスローガンのもと、手作り合唱団結成のために、啓江さんのライフワークだった博品館劇場での「夢で逢いましょう」公演vol.16(2009年3月)で合唱団員の募集をしました。そして同年4月より8団体、100名強で、「スマイル合唱団」という名の手作り合唱団がスタートしたのです。

 同年10月にはNPO法人を登記し、東京を中心に、首都圏に少しずつその輪を広げていきました。現在(2019年9月末日)はスマイル合唱団が314団体6075名、2017年より立ち上げた青春ポップス合唱団が74団体1069名、合計388団体7144名と、大きな活動として実を結んできたことは感無量の極みです。合唱団員の皆様そして指導員ほか活動に関わっていただいている皆様のおかげです。本当にありがとうございます。

 スタート当初、最も大変だったのは指導員の確保、レッスンではなく公益法人として自主性を育み地域を活性化させる社会貢献の目的を指導員に浸透させることでした。こつこつと理念を貫くべく日々手探りながら進めているさなか、2011年3月11日 東日本大震災が発生し、誰もが経験のない地震にそして二次災害に恐怖を覚えました。震災の時にスマイル合唱団の活動があった地域もありましたが幸い怪我もなく、各合唱団の連絡網が安否確認にも役立った合唱団もありました。

 震災以降、人々は心の拠り所を求めていたのではないでしょうか。私自身、その思いを込めて、団歌スマイルの詞を啓江さんと共に作り曲を完成させました。そして2012年より音楽で何かできないかと模索し、被災地宮城県南三陸町、茨城県日立市でボランティア合唱活動を始めました。2016年熊本での大地震の際には、我々は東日本大震災の経験を生かしてすぐに直接的な物資や寄付を行い、ボランティア合唱活動を始めました。

■啓江さんの思いを受け継ぎ武道館へ

 10年前、手探りながら始めた「スマイル合唱団」ですが、10年を経て確かな手応えも感じています。今後も被災地の方々の心の復興に寄与すべくボランティア合唱活動を継続して参ります。嬉しいことに南三陸町の方々と連携を育むことができ、2018年には、当活動の応援団長でもある安田祥子さんナビゲートによるチャリティーコンサートを、南三陸町ベイサイドアリーナにて行うことができました。微力ながら復興のお役に立てるよう皆で力を合わせ活動して参ります。

 2014年11月23日、合唱団員も増え組織も育ちこれからというとき...私の戦友ともいえるパートナーの啓江さんが急逝してしまいました。志半ばでさぞ悔しかっただろうと察します。私も大きな喪失感と焦燥感で辛い日々を過ごしましたが、啓江さんの思いを残された我々がしっかり受け継がなくてはならないという思いでここまで歩んで参りました。

 生前啓江さんが合唱団の皆さんに「武道館に行くぞー」と鼓舞していた思いが、2015年11月24日一周忌を追悼したサントリーホールでの「第1回スマイル大合唱祭」、2016年11月18日東京芸術劇場での三回忌追悼「第2回大合唱フェスティバル」、そして2017年11月10日東京芸術劇場にて没後三年追悼「第3回大合唱フェスティバル」と続き、奇しくも2021年開催を予定する武道館での大合唱の足掛かりとなりました。

 活動開始から10年を経たいま、「音楽で日本の笑顔を」の活動が今後も人々の絆を作り、街作りに寄与し、音楽を通じ、暮らしの中に少しでも笑顔が広がることを願っております。

理事長 岡田秀春